「月」

 

 

空に貼りついてることに
つかれた月が
ストーンと落ちてきたら
受けとめて
ぎゅっと抱きしめよう。
おつかれさま。
いつもいつも
見ていたよ。
 
 

 

 

「花」
 
 
花はかわいい。
 
花は美しい。
 
そして花は
かわいいとか
美しいとか言ってる人間より、
ずっと激しく生きている。
 
ひとつも
嘘をつかないで。
 
逃げも隠れもしないで。
 

 


 
 
「花畑」
 
 
花畑に
ひとりで行った。
 
花に
仲間だと
思ってほしかったから。
 
誰かと行ったら
私はきっと
言葉を発してしまう。
 
そうしたら
花に
人間だってばれてしまう。
 
花畑に
ひとりで行った。
 
そよそよと風が吹いて
花びらがゆれた。
葉っぱがゆれた。
私の髪がゆれた。
 
 
 

 

 

「おひるね」
 
 
読みたい本も
見たい映画も
ない
 
会いたい人も
いない
 
少し   眠ろう
 
今は
言葉を
何ひとつ
食べたくない
 
窓を開けて
少し    眠ろう
 
風だけを
おなかいっぱい食べよう
 
 
 

 

 

「帰りみち」
 
 
うわあああん
 
坂道を
のぼっていたら
急に
涙が出てきたよ
 
うわあああん
 
忙しい  という
魔法がとけた
 
あなたがいなくても
だいじょうぶ  という
魔法がとけた
 
うわあああん
 
うわあああん
 
もうすぐ
もうすぐ
家に着く

 

 

 

 

 

「武装」

 

 

ちょっと
いじわるにならないと
生きていけない気がして
ある日
いじわるを
身につけた。
 
そうやって
そうやって
自分を守るために
身につけたもので
私はゆがんで
弱っていった。
 
私はずっと
こころをきれいにすることを
怖がってばかりいたね。
あきらめてばかりいたね。
 
 
 

 
 
「喜びのしっぽ」
  
 
犬に吠えられて
ごめんなさい
ごめんなさい  と
早足になる。
 
私の中の
なにか
邪悪なものに気づいて 
犬は吠えてるのかもしれないって
怖くなる。
 
 
人のことも
時々  怖くなる。
 
私の中の
邪悪なところ
弱いところをみつけて
吠えるかもしれないから。
かみつくかもしれないから。
 
攻撃されるのも
攻撃するのも
嫌だよ。
 
ぱたぱたしっぽをふりながら
私は
人に   会いたい。
 
ぱたぱた。
ぱたぱた。

 

 
 

 

 

「教えてね」
 
 
星は
音もなく   光る
 
花は
音もなく   咲く
 
あなたのこころは
音もなく   震える
 
騒がしい世界の中で
私は
大切なものを
いくつも
見過ごしているのかもしれない
 
だから
遠慮しないで
教えてね
 
"星が  光ってるよ"
"花が  咲いてるよ"
"私は今  悲しいよ"
 
ひとつひとつ
教えてね
 
私も
あなたに
教えるよ